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開店当初の鯉の巣
 

 筑後川の生き河童と呼ばれた「鯉とりまあしゃん」こと故上村政雄さんの長男忠義さんが、まあしゃんとともに鯉料理の店「鯉の巣」を始めたのは昭和20年代のこと。店には、まあしゃんに魅せられて田主丸へと足繁く通い、河童族結成の中心人物ともなった芥川賞作家の火野葦平さん他、日本全国からお客さんが足を運び、まあしゃんが自ら腕をふるう鯉料理を堪能する名店となりました。連日の賑わいに、忠義さんがまあしゃんから支店をまかされたのは昭和45年。まあしゃんが亡くなられた今、本店より古い歴史を刻んでいるのは、川船が看板のこの支店です。

 現在はまあしゃんの孫である政昭さんが板場に立ちますが、半身におろされても、なお心臓が動いているほどの見事な鯉さばき。あらいも湯からひきあげ瞬時に水を切り、また氷水にさらす、その一連の動作は何万回と繰り返してきた、まあしゃん直伝の技です。鯉は2割が雄で、8割が雌。その数も少ない「男鯉」があらいには絶品で、「女鯉」は鯉こくにというのは政昭さんのこだわり。
酢味噌ではなく、政昭さんのお母さん、幸子さん手づくりの三杯酢とともにあらいを出すのは、その川魚独特の生臭みのなさと、独特の歯ごたえと舌触りへの自信のなせる技。味噌もまた手づくりという鯉こくは、うろこ一枚にいたるまで美味で、一度食べたら忘れられない味わです。


見事な鯉さばき

筑後川の珍味

 鯉は、病も治り、お母さんのお乳がよく出るようになると昔から言われている滋養に富んだ食材。店内の生け簀には、鯉だけでなく鮒も泳ぎ、3月までという寒鮒の刺身は幸子さん曰く「気絶するほどおいしい」という逸品。地元の人でもなかなか食する機会のないこの寒鮒刺。出会えたら幸運という珍味です。今では貴重となったハヤや川海老、タニシの煮付けなどもあり、田主丸土産として親しまれています。

 鰻は、長年寝かせたタレで焼く逸品。蒸籠蒸しや白焼きもまた絶品です。町内であれば配達も。長年、来たお客さまには鯉の巣の鰻をもたせるというお客さまも多く、老舗の味わいがおうちでもいただけるというのはうれしいこと。そして、絶妙な塩加減と、串打ちも見事で姿美しい焼き鮎は、解禁日以降、6月ぐらいからは天然となります。骨から内臓まで味わいつくす、筑後川のまさに旬の味です。
今でも遠く関東、関西、果ては海外からまで人々がはるばる足を運ぶ名店であり続けている鯉の巣支店。三代にわたって受け継がれている、田主丸の名を全国に知らしめたまあしゃんの力みなぎる鯉料理を、ぜひ一度味わってみてください。


蒸し上がったばかりの蒸籠蒸


鯉と鮎が味わえる定食


鯉の巣
久留米市田主丸町田主丸619-2
TEL 0943-72-3659
不定休


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