板町にある明治三十五年創業の「太助せんべい」。初代太助が、こどもや病人にも食べられるようにと、小麦と「耳納山地の地下水」を使い、一枚一枚丹念に焼き上げたせんべいは、さくさくとして、口の中でふわりととけます。せんべいの上にかかる博多人形の肌のように光沢を帯びたリン(あくを丹念に抜いた砂糖を水で溶いたもの)の甘さが、懐かしく、やさしい味わいの逸品です。
戦前にありとあらゆる金属が武器をつくるために回収された折、その大切なせんべいの焼き型を供出して店を閉じました。終戦を迎えたある日、お得意さんだった豆腐屋さんが、駅前に山積みされていた鉄くずの中から、その金型を見つけだしてくれたおかげで太助せんべいは再び蘇ります。
店主の後藤ミドリさんの手仕事による炭火で湯煎しながらのリンかけは、砂糖がかたまる温度を見極めた刷毛さばきは長年の勘がたより。他の人では美しい艶がでないといいます。今はお孫さんも含め三代でつくるせんべい。ご主人が早くに亡くなった後、せんべいをつくりながら女手ひとつで5人の子供を育て上げ、孫5人、曾孫10人に恵まれたミドリさんの手は、今日もすっすっと働き続けます。 材料の仕入れ先もつくり方も創業以来何一つ変えず、心をつくした素朴なせんべいを買いに、人々ははるばる足を運びます。
太助せんべい 住所/久留米市田主丸町板町1-5 TEL/0943-72-2548 営業時間/8:00〜20:00 店休日/第3火曜日